1. 美容情報トップ
  2. 美力向上委員会
  3. エレガンスの極意
  4. 情熱のスペイン 美食通信
  5. 西村弥子の記事9
西村弥子
西村弥子
ソムリエール&ライフスタイルコンシェルジュ
詳細を見る

Lesson9オペラ「カルメン」に見る、アンダルシアの媚酒(びしゅ)「シェリー」

フラメンコ発祥の地であるアンダルシアは、まさに情熱(陽)と郷愁(陰)のコントラスト。今回は19世紀にタイムトリップして、ご当地ワイン「シェリー」の魅力をお伝えします。さて、カルメンが愛したワインとは!?

恋多き自由奔放な美女「カルメン」は辛口シェリーを愛飲していた!

 世田谷の桜新町の、小さなワインダイニングでもソムリエとして勤務していました。カウンター中心の心地よい店で、店主がワインラバー。その上、オペラとロックが大好きで、色々なBGMが掛かります。私がお気に入りなのは、ビゼー作曲の「カルメン」。何故なら、「セビージャ(セビリア)」というアンダルシアの都が舞台の恋愛悲劇で、私が初めてスペイン旅行をした時、最初に訪れた憧れの町、だったからです。

 フランスオペラの代表作で、世界的にも名高いカルメンは、1820年頃のセビージャ(現アンダルシア州都)が舞台。タバコ工場(現セビージャ大学)で働く女工の中で、若い男たちに一番人気のヒターナ(スペイン語でジプシー女性の意)、カルメンが主人公です。美しく、とんでもなく色香のある情熱的な悪女が、ナバーラ王国貴族出身の衛兵ドン・ホセを誘惑し、彼の人生を狂わせてしまいます。しかし、彼女はイケメン闘牛士のエスカミーリョにあっさりと心変わり。最後は、彼女を愛しすぎて嫉妬に狂い、激昂したドン・ホセに刺され命を落としてしまうという、とても劇的なメロドラマです。カルメンを前にしたら、今の日本で言うところの“肉食系女子”なんていう言葉はかすんでしまいます。自由を求め、自分の生きたい様に生き、死をもって全ての束縛から逃れたという生き様は、ある意味「潔い」とも言えるでしょう。音楽では「ハバネラ」、「闘牛士の歌」なども素晴らしく、有名ですね。

 その幕の中で、カルメンがドン・ホセを誘惑するシーンや、カルメンが馴染みの居酒屋でヒターノス(ジプシーの総称、複数形)とフラメンコを歌い、踊りながら饗するシーンにも、ぶどう酒が登場します。実は、そのお酒こそが「マンサニージャ」。アンダルシア地方固有の酒精強化ワイン(製造過程でアルコールを添加し強化したワイン)で、辛口シェリーの一種です。ドン・ホセもこのマンサニージャを飲み、カルメンに心奪われ、転落の人生を歩むのです。

フラメンコの衣装でポピュラーな水玉は、ヨーロッパでは「ほくろ」の象徴。女性のチャームポイントで妖艶さを増す模様です。写真は、プロのバイラオーラ(踊り手)で友人の池谷香奈子さん。御殿場でフラメンコ教室を主宰しています。
アンダルシアを代表する断崖絶壁の白い町ロンダは、ベルメハ山脈の北に位置し、その昔、山賊がいたんだとか。自然要塞のような街の入り口では、本能的に胸がドキドキします。約98mもあるヌエボ橋より撮影。
初夏のアンダルシアの風物詩。サンルーカルから、セビージャまで車で移動していると、見渡す限りのひまわり畑にいっぱい出会えます。

1784年建設、スペイン最古のロンダ闘牛場。 闘牛は、農作物の豊穣祈願に牛を捧げるという神事が「騎馬闘牛」に発展し、さらに闘牛士が「ムレータ」という赤い布で牛を制御する、現在の形に変化しました。ロンダはその「近代闘牛」発祥の地。毎年9月に開催される闘牛祭では、スペインの宮廷画家ゴヤ(1746-1828)の描いた伝説の闘牛士「ペドロ・ロメロ」が着用していたとされる衣装で牛と対決するのが特徴です。
セマナサンタ(聖週間)を代表する揚げ菓子「トリハス」を作るシーン。バイラオーラ(踊り手)の香奈子さんがお世話になった、ヘレスのフラメンコ・ファミリーのマドレ(お母さん)。

 この大衆歌劇カルメンには、まさに一般的なスペインに対するイメージが、ギュッと凝縮されているように思います。フラメンコ、闘牛、そして情熱的な悲恋。これは19世紀後半のパリで初公演されたのですが、原作はメリメというフランス人作家の小説で、欧州各地を旅し、1845年に発表しました。著者がスペインを旅行中、実際に起こった事件を元に執筆したそうですが、現在のような辛口シェリーがイギリスを中心に広まったのも19世紀。マンサニージャはその中で最も古く、18世紀には生まれていました。このことからも、当時からアンダルシアの土地で民衆に親しまれていたことがわかります。もしかすると、メリメもかの地でシェリーを飲みながら、カルメンとドン・ホセのイメージを膨らませ、筆を進めたのかもしれませんね。そんなことを考えていると、ワインという飲み物は、時空を超えて楽しめるロマンティックなお酒なのだと実感します。

 では、カルメンがこよなく愛し、ドン・ホセの人生を狂わせたというシェリー、マンサニージャとは一体どんなワインなのでしょうか。次のレッスンで詳しく紹介します。

〈参考文献〉
『シェリー、ポート、マデイラの本』(小学館 明比淑子 著)
『シェリー酒 知られざるスペインワイン』(PHPエル新書 中瀬航也 著)

西村弥子の新着ニュース

情熱のスペイン 美食通信の記事一覧

他のエディターの新着記事

ab

読者エディター3人がお答えします!暮らしのコンシェルジュ


ピックアップ
読者エディター
美の賢人ブログはこちら
ピックアップ