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葵祭と平安時代の猫たちと

2014年05月31日麻生圭子

京都の五月は、草木あるところは、やわらかな緑で満たされていき、花色は桜色から、緑や青、紫という凛々しい色に移る。生命が若返る季節ともいえます。
そんななか、京都では葵祭が行われました。上賀茂、下鴨両神社の神さまへご挨拶をするため、御所から勅使や斎王(現在は斎王代)たちがお付きを連れ、緑の風の中を渡っていく。遠景から見るさまは、平安絵巻を超えた美しさです。
京都の猫たちも毎年、楽しみにしているらしい。ウワサですけどね(笑)。

源氏物語には猫も登場

花で彩られた、葵祭の牛車

毎年5月15日に行われる、葵祭(賀茂祭)。平安時代には、朝廷と賀茂氏が執り行う、貴族の祭として、栄華を極めたのだそうです。当然「源氏物語」にも、登場します。祭の主役、勅使を勤めることになった光源氏、そのハレ姿の見物に、正妻の葵の上の牛車と東宮妃で元カノの六条御息所が乗る牛車が鉢合わせし、騒動を起こす。葵祭を語るときには、必ず、この件は出てくるので、源氏物語を読んだことがない人でも、聞き覚えがあると思います。

一方、源氏物語には猫も登場するんですよ。皇族、貴族たちの飼い猫として、重要な役所で登場します。東宮の妹で、光源氏の2番目の正妻(女三宮)は、仔猫がなつくまで、紐につないで飼うことに( 御簾の中に閉じ込めることは不可能ですものね)。ところが大きな猫に追いかけられ、逃げるうちに、その紐がひっかかり、御簾をずるずると引き上げてしまう。外で蹴鞠をしていた貴族(柏木)に、そのかわいい姿を見せてしまうのです。仔猫が不倫への紐も引いてしまう。作者の紫式部さんも猫好きだったかしらんと、思わせる一節です。

宇多天皇の愛猫は黒猫だった

これは私の愛猫、石畳の上の皇帝ペンギン。

平安時代の猫は唐猫と呼ばれていたようです。

平安前期の天皇に、宇多天皇という方がいらっしゃるんですけどね。京都好きなら、仁和寺を創立者として 、また菅原道真を重用した天皇としてインプットされている方です。
でも、猫好きの私は、この方の名前をきくと、あ、あのチョー猫好きな天皇さん、と思わず、相好がでれっと崩れてしまう。

恐れ多くも(!)、天皇の日記「寛平御記」に、猫のことが綴られているのです。原文はむずかしい漢文ですが、くねるこ大和さんが、ブログの中で、イラストとともに、くるねこ語訳を披露なさっていますので、興味がある方は、ぜひ検索にかけてみてください。千年以上も前の天皇に、親愛の情がじわじわっと湧いてきます。

参考までに、下記は私の意訳(想像も含む)です。「先帝から預かった黒猫(たぶん唐猫)は、ふつうの黒猫は浅黒色だけど、この子は墨のように黒くて」と、その色艶からはじまり「屈むと粒みたいに小さいけど、のびーと伸びると、弓を張ったような流線型になって、目はきらきら、でもまーるくなると、どこが足だか尾だかわからなくなって」と、そのかわいさを吐露。そして「歩くときは音もなく、雲上の黒龍みたいな感じで」と、これ以上ないというくらい、崇め、誉める、誉めちぎる。でも最後は、さすがにご自分でも、ちょっと書き過ぎかな、と思われたようで「あ、先帝から預かった猫だから、かわいがってるだけだからね、うん」と、苦しい言い訳。そんなところも、猫好きにはたまらない日記です。そうそう、餌は乳粥というものを与えていたそうですよ。

葵祭を祝って咲く、大田沢の杜若

大田神社の大田沢に杜若(国の天然記念物)

さて、最後は今回も花の話を。京都で五月の花といえば、私は杜若(かきつばた)を挙げます。

上賀茂神社の摂社、大田神社の境内には、古(いにしえ)から群生する杜若の沢(大田沢)があります。
毎年、葵祭に合わせるように、杜若は支度をし、五月上旬から中旬、その花面を空に向けるのです。杜若も、ここから葵祭の路頭の儀に参列しているつもりなのかなと、見るたび、思う私です。

ならば猫も、きっと神さまの森の奥から、見物しているに違いない。猫はきれいなもの好きですから。

籠の中からではありましたが、今年、うちの猫も、この杜若を拝むことができました。その帰り道、車からでしたので、写真は撮れませんでしたが、上賀茂神社の近くの路地で、白黒の猫を見かけました。清少納言は「枕草子」の中で、猫は、背中が黒くてあとは白いのがいいと言っていたようです。

麻生圭子

Aso Keiko

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1957年大分県日田市生まれ東京育ち。83年、作詞家としてデビュー。吉川晃司、徳永英明、小泉今日子などのヒット曲がある。進行性の難聴のため、91年に作詞家を休業、エッセイストに。96年から京都在。99年より、夫と猫と町家暮らし。代表作に「東京育ちの京都案内」「京都で町家に出会った。」(文春文庫)、「京都がくれた小さな生活。」(集英社be文庫)など。最新刊は「京都早起き案内」(PHP新書)。近々、ロンドンに移住予定。

関連リンク: 麻生圭子の京都のしずく


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