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春の日の、「猫的お・も・て・な・し」

2014年04月30日麻生圭子

どんなに高く塀を張りめぐらせても、よそ猫たちは屋根や庭木を伝って、わが家の敷地に入ってきます。飼い猫、野良猫、入り乱れ、そこには人間とは別組の、猫の町組が存在しているようです。それは面白いことなんですが、問題なのは、人間のテリトリー(人間の隣家との境界線)と、猫のそれが異なるということ。飼い主は、わが家の敷地は、わが家の猫たちの専用、と思っているのだけれど、彼らの町組の規律では、そうなっていないようで、日々、いろんなドラマが繰り広げられています。今回は四月の花見のときの猫物語をひとつ。

台湾からのお客さまを、うちの町家に招くこと。

富士しだれという、楚々とした桜。

四月のある日、台湾からのお客さまをわが家に招きました。親日の美人姉妹が京都に桜を見にやってきたのです。表千家主催の二条城の観桜茶会や、佐野藤右衛門さんの桜苑、龍安寺、東寺、蹴上のインクライン、嵐山にも案内しました。
でも彼女たちの、そして私にとっても、一大イベントだったのは、わが家での花見でした。

とはいえ、わが家(築90年の町家)には、桜の木はありません。町家の庭には桜は植えないのが、昔からのお約束らしいのです。久しく空家になっており、庭も荒れ放題でしたので、転居の前には、露地(茶庭)を得意とする庭師の親方に入ってもらいました。苔庭にするために土を入れ替え、いくつかの樹木を足し、とここまでは親方に全部、お任せしました。ただ最後にひとつだけ「この部分にはしだれ桜を」と、強くお願いしました。そのくらい、桜が好きなんです。でもあっさり却下されてしまって。理由はいくつかあり、どれも筋は通っていましたが、それでも植えれば、何とかなったな、と今は思います。

この春、ロンドンへ移る前に、ささやかな桜の夢を叶えることに。富士しだれという種類の、小さなしだれ桜の苗を買い、自分で鉢に植え替えました。

その花見の席でのハブニング!?

私に見つかって、耳がぺたーっ。警戒モードの茶トラ

なかなか花芽が膨らまなくて、気を揉みましたが、彼女たちを迎える頃には、ささやかながら、満開に。当日は縁側に藍色の毛氈を敷き、座敷庭の真ん中に、鉢植えの桜を置きました。縁側にみんなで横並びに座って、台湾姉妹の手土産のシャンパンで、乾杯。うちの二姫たちも現れ、花見弁当を広げはじめたときでした。

まや(シンガプーラ♀1才)が、そわそわししています。どうしたの? と、思ったととたん、のしのしと、茶トラ(♂)登場。まるで真打ち登場、といった態度なんですよ(topの写真がそのときのものです)。もちろん、うちの猫ではありません。首輪もしていないし、汚れ具合からも、たぶんのら猫。私たちにとっては、よそ者なんですが、猫の町組ではどうもわが家は茶トラのシマになっているようなんです。

それが証拠に、まやもロッタも威嚇しないんです。とはいえ、仲良くもない。うちの子たちは、正直なところ、近づきたくはないんだと思いますよ。けれど、雄猫がいない、女所帯ですからね(猫のね)。一帯を仕切っている町内会の組長を、敵には回したくない。そのあたりは本能なんでしょうね。距離を置きつつ、自分の餌を横取りされても、黙認しつつ、うまくやっています。飼い主の私たちも、二姫とも手術(避妊)はしているので、公認はできないけど、あきらめムードで黙認してしまっています。

今度はまやが木登りを

楓の舞台で、大見得を切る猫。

幸い、台湾からの美人姉妹も大の猫好き。ロッタがお弁当の桜鯛をもらおうと、みんなの膝前をうろうろするのも、茶トラの組長の登場も、喜んでもらえましたが、一時はどうなるかと、冷や汗ものでした。

ところがハブニングはまだ待ち受けていた。茶トラが見え隠れするせいか、まやのテンションは上がる一方。私がちょっと目を離したすきに、座敷庭のいちばん奥の、青もみじの梢に登り始めてしまいました。
檜の舞台ならぬ、楓の舞台で、これまた都をどり(祇園甲部の芸舞妓さんたちの公演)ならぬ、都きのぼりを披露したまや(シンガプーラ♀1才)。前日、本物の都をどりを観た台湾の美人姉妹でしたが、まやの「猫舞い」には、二人とも庭に降りてカメラを連写。最後は歌舞伎まで披露、大見得を切って、拍手喝采となりました。



春の日の、「猫的おもてなし」でした。

お弁当のあとは、座敷で薄茶を。

猫と桜と、私たちの精一杯の「お・も・て・な・し」。
二姫一太郎の猫の脇役がいてくれたおかげで、こんな小さな桜でも、ちゃんと花見の主役を張ることができました。
弄花香満衣 弄猫幸満衣 
と、以上、春の京都の、小さな猫物語でした。


麻生圭子

Aso Keiko

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1957年大分県日田市生まれ東京育ち。83年、作詞家としてデビュー。吉川晃司、徳永英明、小泉今日子などのヒット曲がある。進行性の難聴のため、91年に作詞家を休業、エッセイストに。96年から京都在。99年より、夫と猫と町家暮らし。代表作に「東京育ちの京都案内」「京都で町家に出会った。」(文春文庫)、「京都がくれた小さな生活。」(集英社be文庫)など。最新刊は「京都早起き案内」(PHP新書)。近々、ロンドンに移住予定。

関連リンク: 麻生圭子の京都のしずく


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