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伝統の技術で美しい「音と形」を作りだす

2015年03月23日山本ミッシェール

金槌(かなづち)で作られる音と形があります。
それは普通の人が聞き分けられないような繊細な音を聞き分けて、
繊細かつ正確な手つきで金属を叩いて作る職人の工房で生まれます。
今回は富山県高岡市で仏具の技術から生まれた現代的で美しい形をご紹介します。

~どの宗派も使う「おりん」~

おりん 【昇龍】大徳寺型

お経とともに「チーン」と鳴る「おりん」の響きは皆さんも聞いたことがありますよね。自宅のお仏壇にありませんか?私の家にもありますが、ただ習慣的に手を合わせて「ちーん」と鳴らせていました。澄んだ深い音がとても印象的な「おりん」ですが、ポクポクと鳴らす木魚(もくぎょ)と同じ「梵音具(ぼんおんぐ)」と言われる仏具の一種です。お経を読む際に鳴らすもので元々は禅宗で用いられる仏具でしたが現在はすべての宗派で使用されているそうです。

おりんには、実はとてもシンプルな役割があります。それは「お経が始まるという合図」であり、「音程合わせ」と「リズム合わせ」という役割です。
なので「おりん」の音は使いやすいようにレ・ミ・ファ・ソのどれかに作ってあります。
また、「おりん」の音は極楽浄土まで届くという言い伝えのほか仏心も呼び覚ますとも云われているそうです。

自宅などで使う小型のものは「おりん」と呼びますが神社などで使われる大型のものは「磬子 (けいす・きんす)・だいきん・大徳寺)」と呼ばれ、宗派によって呼び方は違いますが使われる用途は同じなのだそうです。
ですが、この「おりん」にはお経を上げるときに使う意外にも効果があることを存知ですか?

~音が持つヒーリング効果~

faywithlove.com

海外では「Singing Bowl」と呼ばれ、チベットや日本などアジアの「おりん」を使って行う音楽療法や瞑想も人気があります!

なお近年、音声・音響学・鑑定の第一人者で日本音響研究所・鈴木松美博士によると「おりん」には「1/fのゆらぎ」があるといわれています。波の音、小川のせせらぎ、滝の音、風にそよぐ木の葉の音、小鳥のさえずり、虫の声…など人が心地よく感じる音の共通点から発見され、聴く人の脳波のα波を増加させ、リラックス効果が生まれる事を指します。そして「おりん」の音色からもこのゆらぎがあることが科学的実験で立証されています。

~現代のおりん~

上:花のりん (左から どんぐり、うめ、チューリップ、あざみ)、下:cherin(チェリン)

最近の住まいの中では昔ながらのお仏壇がある家庭も減ってしまって「おりん」がない家も増えてきていると言われています。しかし、現代のマンションや家に合ったとてもモダンな「おりん」も続々と登場しています。今の時代に合わせた仏具として生まれたものも、最近では癒しのアイテムとして、また音色の美しさや見た目の可愛らしさからも買っていく人も増えているそうです。

これは海外へのお土産にもきっと素敵ですね!

~伝統の音を守る職人~

4代目昇龍 島谷好徳さん

銅器の全国生産量9割を占める富山県高岡市は仏具の製造でも日本一です。そこで1909年から「おりん」作りを代々されているシマタニ昇龍工房(しょうりゅう・こうぼう)の4代目、伝統工芸士の島谷好徳さんにお話を伺いました。島谷さんによるとかつては沢山いた「おりん」を作る職人も今や島谷さんを含めて国内でも10人に満たないそうで、そのうちの3人が島谷昇龍工房にいます。工房では金槌で金属をリズミカルに叩く音が鳴り響いていました。

~おりんが出来るまで~

金槌で叩きながら形成していく

「おりん」は真鍮(しんちゅう)、銅、亜鉛(あえん)の板を組み合わせて金槌で叩いて作られていますがその配合はそれぞれ違うそうです。なかでも島谷さんのこだわりはその深く優しい音色で通常より銅の割合を多くすることで作り出しているそうです。

そしてこの取材の際に驚いたのは、良い音色を作るために重要なものは「金槌」で叩くことだということ。まずは形を整えながら数えきれないほど叩き続けます。金属を火で熱して金属の細胞をやわらくして、また叩く、この作業が繰り返されたのち、隙間なく美しい黄金の槌目(つちめ)が付き強くなります。

続いて「鳴り出し」と呼ばれる音の調律を行います。なんと音も金槌で叩いて、聞き分けて調律をします。島谷さんはそれが出来る日本でも数少ない職人の一人でもあります。

工房では調律された「おりん」とそうでないものの聴き比べをさせていただきました。そこで調律後のあまりにも豊かな「おりん」の鳴り方に驚き、調律とはどのようなものなのか聞いてみました。

~心に響く音色を作る技~

職人の言葉で音は甲(カン)・乙(オツ)・聞(モン)で表現されます。鳴らしたときに音にひずみがないか、良い音が鳴るかを職人は聞き分けます。

島谷さんによると「音にも色があるんですよ。きちんと調音された「おりん」のゆったりと長い音のうねりは心が落ち着いて和みます。音の違いも知ってほしいです」「おりん」を打ちながら良い音を届けたいと思っています。」

なお、「おりん」は一度寺院などに収めると50年から100年持ちます。古いものでは修理をしながら200年も長持ちします。島谷さんは笑顔で「修理をしながら、そして新しいものを作りながら思うのは、勝負をしているということ。100年前の職人の技と勝負し、そして100年後の職人とも勝負するということ。後世に伝わるような『おりん』作りをしたい。」

~伝統から生まれた新たな挑戦~

使う人の発想で自由に使える「すずがみ」

さらに島谷さんが伝統の「おりん」を金槌で叩く繊細な技術を活かして開発した錫(すず)100%の器は都内のセレクトショップなどで外国人観光客などにも飛ぶように売れています。

「すずがみ」と呼ばれる器はまるで紙のように薄く、とても柔らかく手で簡単に曲げたり、折ったり、丸めたりとまるで折り紙のように色々な表情をつけることが出来ます。そして曲げた後でもスーッとまた元通りに伸ばすことが出来ます。金槌の槌目がついた美しく不思議な器は13センチ角の小さなものでも500回以上も金槌で叩き絶妙なしなやかさと強度とまばゆい輝きが生まれます。

この伝統的な技術を使った「すずがみ」は工房などで体験もすることができます。私も体験してきましたが、リズミカルに打つ感覚が気持ちよくついつい真剣になって没頭してしまいました。

~本物の音色を聞く体験~

3月20日(金)の夜には東京・代官山TENOHAで島谷さんによる「おりん」のデモンストレーションとトークショーが行われます。

おりんの深いお話と包み込まれるような音色を聞きにいらっしゃいませんか?

「島谷好徳さん(シマタニ昇龍工房)に聞く、"金鎚で叩く技術"により生まれてくる音とカタチ」
高岡職人サロン【TENOHA SPRING FESTA】
詳細や申し込み:
http://tenoha.jp/and-stylestore/blog/20150313-204639.html

~取材協力~

●有限会社シマタニ昇龍工房
〒933-0847
富山県高岡市千石町4-2 
TEL:  0766-22-4727
FAX:  0766-22-4717
URL:  http://www.syouryu.co.jp

●「花のりん 、Cherin チェリン」
ハシモト清
TEL: 0766-22-8460
URL: http://www.hashimoto-sei.com/
販売 大寺幸八郎商店
http://www.oterako8ro.com/

●代官山TENOHA
東京都渋谷区代官山町20−23
03-5784-0741
URL: http://tenoha.jp/

山本ミッシェール

yamamoto michelle

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元NHK記者。現在NHK国際放送局のアナウンサーとして活躍。「Science View」では全国を駆け巡り、日本の技術力を支える「匠」を世界にリポート。アメリカで生まれ、幼い頃からイギリス、フランス、ドイツなどで海外生活を経験。国際的な感覚をもちながらも、日本の伝統的な「和の美しさ」に対する関心は高い。記者時代に過ごした京都をはじめ、日本の伝統美の取材を独自で続けている。その他、コミュニケーション指導として、桜美林大学講師、各企業での講演会等でも活躍中。
著書「見るだけ30分!!あなたに合った「聞く」「話す」が自然にできる!」(すばる舎)

関連リンク: ミッシェールのスマイル・カフェ(ブログ)


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