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東京の地下に広がる 幻想的な「東京うど」の世界

2015年02月10日篠原久仁子

寒い日がまた続きますが、お店には山菜なども並び始め、春の訪れを感じます。この時期、無性に食べたくなる春の味覚といえば、さわやかな薫りと独特の食感がたまらない「うど」。中でも、すらっと長く、白さ際立つ「東京うど」は東京が誇る特産野菜です。その美しさの秘訣は、栽培方法にありました。今回、めったに入れない生産現場に伺ってきましたので、その様子をおすそわけいたします。

真っ暗な穴蔵で育つ 真っ白な「東京うど」

うどは数少ない日本原産の野菜のひとつで、英名も「udo」。平安時代の書物に記載があり、江戸時代には栽培が始まっていたとされています。東京では、関東ローム層の粘土質が、地中深く穴を掘るのに適していたことから、「うど室(むろ)」と呼ばれる穴蔵の中で栽培するようになりました。「うど室」で育つ「東京うど」は、光に当たらないため、白く、繊維が優しく、アクが少ないのが特徴です。

栽培は1年がかり

「東京うど」栽培の要になる「うど室」ですが、そこで白い茎が芽吹き、うどが育つ期間は全体のごく一部。実は、前年の春から栽培が始まっています。うどは種ではなく、株(根株と呼びます。)から育つ作物。根株が、たくさんのうどを芽生えさせる栄養を蓄えることができるよう、地上でまず根株を育てる必要があるのです。

4月頃、畑に植えられた根株は、大地と太陽の恵みを吸収して芽を出し、茎を伸ばし、可憐な花も咲かせます。霜が降りると、茎は枯れてしまうまですが、その頃には根株が栄養を十分にため込んで準備万端の状態に。いよいよ地下の「うど室」に運び、植えるのです。(「伏せ込む」と言います。)伏せ込まれてから約1ヶ月。真っ暗な中で、根株の栄養と水だけで「東京うど」は育ち、長さ約80㎝まで伸びたところで、やっと収穫の時を迎えます。

「東京うど」が織りなす神秘の空間へ

心躍らせながら、はしごをおりる筆者。

それでは、いよいよ「うど室」の中に参りましょう。今回、見学させてくださったのは小平市で17代続く「にごりや農園」小野さんです。なるべく「うど室」に光や冷たい風が入らないようにするため、生産者であっても開け閉めは最低限にしているほどなので、中に入れていただけるというのは大変貴重なこと。

ひと一人分の小さな正方形の穴が、「うど室」への入り口です。深さは約3m。先代が100年以上前に掘られたという歴史ある空間を降りていくと、温かな空気を感じました。「うど室」の中は、うど栽培に適した15~20度に保たれているのです。しっとりした土とうどの香りも感じながら降りきると、広がっていたのが「東京うど」が織りなす幻想的な世界!

根株の栄養を糧に上へ上へと伸びる「東京うど」

地上とつながる縦穴を中心に東西南北に横穴が広がり、それぞれに所狭しと「東京うど」がにょきにょき育っています。真っ暗な中、電球に照らされて、浮き上がる真っ白な姿は神秘的にも感じられました。

横穴の奥行は3mもあるそうなのですが、高さは、ずっとしゃがんでいなければいけない程度しかない、まさに穴蔵なので、長時間の作業をするのは重労働。また、地上で室の開け閉めや荷物の受け取りなどをしてくれる人が必要で、決して一人ではできない仕事なのだそうです。

そういった大変さもあってか近年、生産者は減り、都内で生産組合に属しているのは約60件、小平市ではわずか3件だけなのだそう。手間を惜しまず、伝統的な「東京うど」栽培を続けてくださっている方々への感謝でいっぱいになりました。

もし「東京うど」に出逢えたら、その麗しさに秘められた物語に思いをはせながら手にしていただければと思います。次回は、「どうやって食べたらいいの?」という疑問にお応えする、「にごりや農園」直伝の簡単ですぐ美味しい「東京うど」の食べ方をご紹介します。

【にごりや農園】
小平市小川町1-185
電話 042-341-6440
http://www9.plala.or.jp/nigoriya/index.html 
にごりや農園では、直売所で「東京うど」をはじめとする野菜を販売している他、うどの収穫体験など、イベントも開催しています。

篠原久仁子

Shinohara Kuniko

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野菜ジャーナリスト。大学卒業後、大手番組制作会社で、報道・ドキュメンタリー番組の企画・演出を手がける。野菜ソムリエ資格取得後の2009年、人と地域を野菜果物にまつわる情報でつなぐ日本初の「野菜ジャーナリスト」として独立。執筆、講演で情報発信を行うなど、様々な形で食企画に従事。「野菜の便利帳~伝統野菜・全国名物マップ」執筆。東京を軸に全国を取材しながら、野菜に魅せられるきっかけとなった信州の古民家で執筆や畑しごとをするデュアルライフを送っている。



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